金色の犬
著:中島勝大:2008.10.3
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日本語では微妙な色あいを表現するのに、動植物の名前がよく使われる。うぐいす色、とび色、ねずみ色、ときいろ、どどめ色。どどめ色は北関東地方の方言かもしれない。“どどめ”自体を知らない方もいらっしゃるのではないだろうか。“どどめ”とは、くわの実の事である。僕の実家のある群馬県では、昔、養蚕が盛んだった。僕が子供の頃までは、父方の祖父の家では、その時期になると居間の隣となりの部屋が“かいこ”でいっぱいになった。時々居間まではい出して来るのを、おばあちゃんが手でやさしくつまんで、チュッとかいこの頭にキスして、となりの部屋へ帰してやっていた。何でチュッとするのかは今だにわからない。その頃、僕は、かいこが恐くて逃げ回っていた。そのかいこのごはんがくわの葉だったので、畑と言えば、くわ畑というのが当り前だった。くわの木には、小指の先ほどの、ぶどうそっくりの実が生る。赤から濃い紫色になると食べ頃のサインで、学校帰り、よくつまみ食いをしていた。甘ずっぱいクランベリーみたいな味だった。その濃い赤紫色がどどめ色である。これら動植物の名前を色につけたのは、その色が変わらない事を前提に考えたのだろうが、ねずみ色なんかは、今ではもうグレーだけとは限らない。色々な色のねずみがペットとして売られているし、”キンクマ“なんていう名前のハムスターを見た事がある。淡いベージュの何とも言えない色で、金色と言ってもいいくらい明るい色あいだった。かわいくて、飼いたかったが、丁度その頃、僕の部屋では、”ジャンガリアン戦争“がくり広げられていて、とてもキンクマの面倒を見る予裕はなかったのであきらめた。イヌ色やネコ色という言葉がないのは当然である。彼らは、さまざまな色をしている。テレビのスペシャル番組で、犬について説明されていた事によると、犬とは、もともと数種類しかいなかったらしい。その数種類を人間が交配させて、今のようにさまざまな色形の犬が作られたのだそうだ。決して自然なままでは、出来得なかった犬種を人間が作り出したのだという話だ。話は前後するが、最近遺伝子の組み替えによって、ブラックライトに反応する蛍光色、青や黄色のマユを作るかいこが作られたそうだ。今の遺伝子組み替えの技術をもってすれば、どんな色の動植物も作れるのである。青いバラは、すでに紹介したと思う。カメレオンはどうだろう。どんな色にもなれる。タコやイカの類は?ホタルは?自ら発光するのである。これらの遺伝子情報を組み合わせたら、どんな事が起こってしまうのだろう。トビウオの羽が透明なのは、知っている方も多いのでは?魚には透明なものは特にめずらしくはない。陸上に住む動植物の透明化はどうだろう。コロイド化というのだろうか。アルビノを通り越した半透明化した人間。何だか宇宙人みたいだ。そう言えば地球も宇宙の一部だった。なぜこんな事を考えたのかと言うと、僕は夢を見たのである。僕は、一匹、いや二匹くらいの犬の首や腹をくすぐってじゃれついていた。仰向けになって喜ぶ犬の姿は、丁度、今実家で飼っている甲斐犬にそっくりで、黒っぽいやわらかい短毛だった。お腹をなでてやると犬は喜んではしゃぐ。すると、何と、その犬の毛色が、その子の感情の変化に反応するように、波打つように、金色に変わっていくのである。もう一匹もなでてみると、喜びと共に毛色が金色に変わっていく。そして落ちつくと体の末端から少しずつ黒に戻っていく。また少し触わると僕の手が触れた部分から金色に光り始める。犬達の喜びが色の変化としてダイレクトに伝わってくる。僕は夢の中で「何てすばらしい犬種だろう!」と思いながら、彼らの色の感情に癒されていた。僕の感動が少しは伝わっただろうか。映像化して見せられればいいのに
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