白昼夢

著:中島勝大
〈 幻聴 〉の章

これは数年前、僕が友人の勧めで作詞や作曲、エッセイのような短い
文章を書き始めた頃、簡単に言うと、自分で歌を作り始めた頃の話だ。

歌の作り方って・・・普通はみんなどんな風に作るんだろう。
人それぞれ違うらしいが。詞から作る方法、曲から作る方法、
同時進行する方法、コードと言われる和音進行から考える方法。
これが、僕が今まで知り合ったミュージシャンたちから聞いた歌の作り方の
パターンだ。他にもあるかもしれないが、今の所僕は知らない。
僕の場合、伝えたい言葉や気持ちがはっきりしている場合は歌詞を、
終わり方も考えずに書き始めてしまう。
そして、書いていく内に、次の言葉や気持ちの流れが生まれ、「何だ、
そういう事が言いたかったんだ」と、まずは歌詞を書き終えてしまう。
そして何度か目で読み返している内に、その言葉にメロディーがついてくる
文章の持つ感情に沿って、メロディーを整えて行くのと同時にこれは
自分では意識してなかった事で、友人に言われて「そうなのか」と
納得した事だが、メロディーを整える時に、頭の中にコードが
鳴っているんだそうだ・僕の場合は。
初めの内は、歌が出来ると、コードとピアノ演奏のイメージを作って
もらう為に友人の家へと出かけて行った。
そして、頭の中で出来上がった歌を歌って聴かせるのだ。
すると初めからピアノで和音を鳴らしてくれる。
自分が気にならなければ、そのまま次へと ゆっくり進んでゆく。
しかし、時々、「ん?何か違う」と感じる所が出てくる。
自分の歌っている声と鳴っている和音が別の所にあると感じるのだ。
これは、不響和音というわけではなくて、確かにそれでも違うわけでは
ないんだが僕の頭の中では、別の感じが響いているのだ。
これの事を友人が「頭の中でコードが鳴っている」と表現したのだと思う。

今では殆ど、同時進行で歌詞と曲が出来てゆく。
曲も出来るという事は、実際には音として鳴っていなくても
僕の頭の中には、コードも鳴っているという事になる。
その作業を、ほとんど頭の中だけや、ごく小さなハミングで行う。
ついには、前奏やメロディーを奏でる楽器や誰かの声まで頭の中で
想像し、記憶から引っ張り出して鳴らしたりもする。
頭の中で、自ら歌を作ってオーケストラ伴奏まで鳴らしてしまっていた。
この頃からである。妙な事が起こり始めたのは・・・。
いつものように静かな部屋でペンを持ち、頭の中で歌を作っていた。
歌詞を忘れないように、思いつくまま書き残してゆく。
心の中で「んーこんな感じかなー」と思っていると、窓の外から
「何それ?」「ヘン!」「最悪!」「よくそんな事できるわね」
「ヘンな歌」というような小さい声だが、女性とわかる声が聞こえる。
頭の中の、自分で鳴らしている想像の音ではなく、外から鼓膜を通して
入ってくると感じる声が聞こえるようになってきた。

幻聴らしきものの始まりである。
後になって、友人に調べてもらった資料には、考想化声というものがある。
幻聴の中の一つらしいが「自分の思考が声として聞こえる」ものらしい。
しかし、自分の頭の中で鳴らしているオーケストラや自分の声は、
決してそれと同じように はっきりは聞こえない。
記憶の中の音、ピアノ、バイオリン、トランペット、オーボエ、そして
自分の声を引っぱり出して、その楽器の知っている限りの特長、
音質、演奏方法(中学の時、ブラスバンド部だったので、たいていの
楽器の演奏方法や特長は憶えている)で、自分の作った歌の
メロディーを奏でさせるのだが、それは耳から入ってくる音、例えば、
窓の外から入ってくる向かいのアパートの人が聴いている音楽や、
前の道を過ぎるバイクやトラックの音などによって、簡単に
かき消されてしまう。それに対して、その女性らしい声は その音達と
同じレベルに聞こえてくるのだ。
それらに邪魔される事は決してない。
その雑音のすき間に入ってくる。
だから考想化声ではないと思うのだが、考想察知であると言う証拠は
その時点でなかった。
考想察知については、また別の機会に触れようと思っているが、
これによって聞こえる声は“他者”の声らしい。
テレパシーを感じるとも言うらしい。電波を用いるともいわれるらしい。
そして、これも幻聴の一つとして数えられる。

すなわち、テレパシーと言われるものは幻聴の一つとしても数えられると
同時に電波を用いた他者の声という、非常に新しい技術とも言われる。

テレパシー。 ずいぶん古めかしい言葉の響きを感じる。
きっと僕が生まれる前から 使われていた言葉だと思う。
しかし、こうして文字にし、自分の体験がそうではないかと表すのは、
未だに大変な勇気を必要とする。
幻聴の一つ、考想察知と表現した方が まだ好感が持たれるのでは
ないかと思いながら。
別に好感を持ってもらう為に書いているんじゃないとも思う。

僕の体験と聞きかじりの知識を基にした自己分析が、レポートのように
伝わればいいと思っている。

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